『商標法』第十条第一項の(八)「他の不良な影響」の適用

——「Nanopia」の再審を例に

案件あらすじ:

 「積水メディカル株式会社」(以下「積水メディカル」という)が第5類の商品「医療用診断剤」などで登録出願した商標「Nanopia」は、商標局に「NANO」が「ナノメートル」という意味で、ナノテクノロジーがハイテクの一種であって商標として誤認を生じやすく、消費者に不良な影響を及ぼしやすいと判定されて、『商標法』第十条第一項の(八)により拒絶されました。積水メディカルが不服として商標評審委員会(以下「商評委」という)に再審を請求した結果、拒絶査定が維持される決定となりました。積水メディカルが北京中裁に審決取消訴訟を提起して、拒絶審決が取消されました。商評委が不服として北京高裁に上訴しましたが、中裁の判決が維持される結果となりました。

結果:

 「Nanopia」は、第5類商品で商品の品質、技術などの特徴について誤認・不良な影響を生じやすいことがなくて、『商標法』第十条第一項の(八)に違反しません。

コメント:

1、「他の不良な影響」に関する『商標法』の関連規定

 『商標法』第十条第一項の(八)に社会主義の道徳・風習を害し、又はその他の不良な影響を及ぼすものは商標として使用できないと規定されています。

 『商標審査及び審理基準』に、「他の不良な影響」とは、「商標の文字、図形又は他の構成要素がわが国の政治、経済、文化、宗教、民族など社会の公共利益と公共秩序に消極的でマイナスな影響を生じることである。社会主義道徳風習を害するもの又は他の不良な影響の判定においては社会、政治、歴史、文化伝統、民族風習、宗教政策などを考慮し、商標の構成及び指定商品と役務を考慮すべきである」と規定されています。

 『商標の権利付与・権利確定に係わる行政案件の審理における若干問題に関する最高人民法院の意見』第3条に、「人民法院は、関連標識が他の不良な影響を有する状況を構成するか否かを審理・判断する際に、該標識或はその構成要素が我が国の政治、経済、文化、宗教、民族など社会の公共利益と公共秩序に消極的でマイナス影響が発生するか否かを考慮しなければならない。もし関連標識の登録が特定した民事権益だけを損害している場合、商標法では既に別途救済の方式と相応のプロセスを定めてあるため、これをその他の不良な影響を有する状況に属すると認定すべきではない」と規定されています。

 2、商品の特徴について誤認を生じることで不良な影響を生じることに関する『商標審査及び審理基準』の判定基準

 『商標審査及び審理基準』には、商品又は役務の品質などの特徴について誤認を生じることを「他の不良な影響」の一つであると規定されています。

 3、本件で「他の不良な影響」の判定

 商評委の主張:「Nanopia」は英文字7つからなり、「pia」が観念のないものです。「Nano」は接頭辞として「ミリミクロン、10億分の一」という解釈が辞書に載ってあり、「ナノメートル」と理解されやすいです。ナノテクノロジーが近年科学研究、生産、生活領域で広く使われているハイテクです。本件商標は指定商品に使用されると、消費者をミスリードし、商品の技術的特徴に関して誤認させて、不良な影響を生じやすいです。『商標法』第十条第一項(八)の適用される状況が多種類あります。「公衆に商品又は役務の品質などの特徴について誤認されやすい」ものは、『商標法』第十条第一項(八)に反すると判定すべきです。

 積水メディカルの主張:「Nanopia」は全体で7文字からなる固有観念のないものです。「Nano」がそのまま「ナノメートル」に訳すことができず、直接ナノテクノロジーに解することができません。関連公衆が商品の技術などの特徴について誤認することがありません。誤認を生じるか否かを判定する際に、一部の文字をもって判定すべきではなく、全体から判定すべきです。

 中裁の意見:「Nanopia」は全体として中国語訳がなくて、固有の語彙ではありません。明らかに多数の単語に分割できるものではありません。中国語を母語とする中国では、普通の消費者が「NANO」と「PIA」の二部に分けて理解することがありません。それに「NANO」が辞書で十億分の一という意味で解釈してあり、中国の消費者がその観念を知りしかも「ナノメートル」を連想することが普通ありません。例え一部の消費者が「NANO」の観念を知っていても「PIA」が含まれているので、普通「ナノメートル」を連想することがありません。

 高裁の意見:外国語からなる商標については関連公衆の認識能力を考慮すべきです。「Nano」は接頭辞で辞書に「十億分の一、毫微」と解釈してあります。「Nano」が接頭辞として常用され、「meter」と組み合わせればナノ・メートルという観念になりますが、本件商標は「Nano」だけからなるものではなくて、「Nanopia」という7文字からなっています。「Nanopia」は観念がなくて、中国関連公衆の認識能力では「ナノメートル」と連想されにくいです。なお、商評委は、本件商標の指定商品がナノメートルに関連があるかどうかを考慮していなくて、ナノメートルの観念を含むことで商品の品質・技術の特徴について誤認を生じることを立証する証拠も提出していません。

 4、本件判決に関係する可能性のある他の事実

 積水メディカルの「Nanopia」医療検査キットが既に薬品監督管理局の輸入許可を受けています。中国で実際に使用されています。第5類に「NANO」を含む商標がたくさん登録されています。「Nanopia」が日本、アメリカ、台湾で登録を受けています。

結論:

 裁判所は本件商標に不良な影響があるかどうかを判定する際に、商標が全体で観念がないこと、関連公衆の認識能力、具体的な指定商品などの要素を総合的に考慮しています。

 
(本文の作者が中国専利代理(香港)有限公司です。)